成果が出ない従業員を普通解雇できる?会社が確認すべきポイント
成果が出ない従業員について、「結果が出ていない」という事実だけで普通解雇を進めると、解雇の有効性が争われ、解雇後の賃金相当額の支払い、復職対応、和解金などが問題になることがあります。
重要なのは、成果が出ていないことそのものではなく、その成果が雇用契約上どこまで求められていたのか、そして成果が出ない原因が、能力不足なのか、勤務態度や勤怠の問題なのか、健康上・私生活上の事情なのかを分けて整理することです。
従業員に成果が出ていない場合、会社では次のような相談が出てくることがあります。
「採用したのに、期待した成果がまったく出ていない」
「管理職として採用したのに、部下も現場もまとめられていない」
「本人に能力はありそうなのに、やる気がなく、会社に貢献していない」
会社が従業員に対して成果を求めること自体は、不自然なことではありません。
労働契約では、従業員は会社に労務を提供し、会社はその対価として賃金を支払います。
そのため、会社の事業に貢献し、一定の成果を上げることは、労働契約の内容といえます。
もっとも、普通解雇で問題になるのは、単に「成果が出ていないかどうか」ではありません。
その成果が、雇用契約書・労働条件通知書・求人票・採用時の説明などで、どこまで具体的に前提とされていたのかを確認する必要があります。
たとえば、高度専門職や管理職として、特定の職務・成果・役割を明確にして採用した場合と、新卒一括採用のように、入社後の教育・育成を前提に採用した場合とでは、会社が確認すべき内容が変わります。
また、成果が出ない原因も一つではありません。
能力そのものが不足している場合もあれば、能力はあるのに発揮していない場合、健康上・私生活上の事情によって能力を発揮できない場合もあります。
この記事では、成果が出ない従業員について、普通解雇を検討する前に会社が確認すべきポイントを、成果の約束、能力不足、勤務態度・勤怠、健康上・私生活上の事情に分けて整理します。
成果が出ない従業員への対応では、まず「成果が出ない」という結果だけで普通解雇を判断しないことが重要です。
会社として成果を求めることは当然ですが、普通解雇では、その成果が労働契約上どこまで求められていたのかを確認する必要があります。
あわせて、成果が出ない原因を、能力がない場合、能力を発揮しない場合、能力を発揮できない場合に分けて整理することが重要です。
原因によって、教育・指導、注意・懲戒、休職、受診の必要性、配置調整など、会社が検討すべき対応が変わります。
このページでは、成果が出ない従業員について、普通解雇を検討する前に確認すべきポイントを整理しています。
中心になるのは、成果未達を能力不足、勤務態度不良、勤怠不良、健康上・私生活上の事情などに分けて、どの論点として扱うべきかを確認することです。
労働契約の終了全体を確認したい場合は、総合案内ページで整理しています。
成果を出し、会社に貢献することは労働契約の内容である
労働契約は、従業員が会社に労務を提供し、会社がその対価として賃金を支払う契約です。
会社は従業員に対して業務命令を行い、その目的である事業を運営し、利益を得るために従業員を雇用しています。
そのため、従業員が会社の事業に必要な業務を遂行し、一定の成果を上げ、会社に貢献することは、労働契約の内容といえます。
会社が従業員に対して「成果を出してほしい」と考えること自体は、当然の出発点です。
もっとも、普通解雇で問題になるのは、抽象的に「成果が出ていない」という評価だけではありません。
どのような成果が、どの程度、どの時点までに求められていたのかを確認する必要があります。
- 雇用契約書・労働条件通知書に、職務内容や役割が明記されているか
- 求人票や採用時の説明で、期待される成果や担当業務をどこまで示していたか
- 職務内容・地位・職責・賃金水準から見て、どの程度の成果が前提とされていたか
- 入社後の指示・目標設定・評価によって、求める成果を具体的に伝えていたか
- 成果が出ていないことによる業務上の支障を具体的に説明できるか
具体的な成果が約束されていたかを確認する
成果が出ないことを理由に普通解雇を検討する場合、まず確認すべきなのは、具体的な成果が労働契約の内容として約束されていたかどうかです。
たとえば、専門職、営業責任者、管理職、高度な経験者などとして中途採用した場合には、採用時に一定の職務・成果・責任を前提としていることがあります。
この場合には、採用時にどのような業務を任せる予定だったのか、どの程度の成果を期待していたのか、賃金や地位がその責任に見合うものだったのかを確認します。
一方で、新卒一括採用や一般職として採用された従業員については、通常、入社時点で完成された成果を出すことまで明確に約束されているとは限りません。
この場合には、成果が出ないからといって直ちに普通解雇へ進めるのではなく、教育・指導、配置、業務の与え方、改善機会を確認する必要があります。
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専門職・管理職・高度専門人材として採用した場合
採用時に、職務内容、責任、成果、権限、賃金水準がどこまで明確にされていたかを確認します。 -
経験・職歴を見て即戦力を期待した場合
どの経験を評価し、どの業務で、どの水準の成果を期待していたのかを確認します。 -
新卒・一般職として採用した場合
入社後の教育・訓練、指導、配置、改善機会をどこまで行ったかを確認します。
つまり、同じ「成果が出ない」という状態でも、採用時の前提によって、会社が確認すべき内容は変わります。
成果未達を理由に普通解雇を検討する前に、まず採用時の約束と期待水準を確認することが重要です。
成果が出ない原因は、3つに分けて考える
実務上、「成果が出ない」という言葉の中には、複数の問題が含まれていることがあります。
会社側の頭の中では一言で「成果が出ない」と整理されていても、その原因によって、普通解雇に向けて確認すべき内容は変わります。
大きく分けると、成果が出ない原因は次の3つです。
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能力がない場合
会社が求める知識・技能・経験・判断力を備えておらず、業務を遂行できない場合です。 -
能力を発揮しない場合
能力はあるのに、遅刻・欠勤、指示違反、協調性の欠如、勤務態度不良などにより、成果につながっていない場合です。 -
能力を発揮できない場合
健康上の問題、精神疾患、私生活上の事情などにより、本来の能力を十分に発揮できない場合です。
この区別をしないまま普通解雇を進めると、能力不足の問題なのか、勤務態度や勤怠の問題なのか、
健康上・私生活上の事情によって能力を発揮できない問題なのかが混ざってしまいます。
能力がない場合は、採用時の前提と改善機会を確認する
「能力がない場合」とは、会社が求める知識・技能・経験・判断力を持っていないために、業務を遂行できない場合です。
この場合、普通解雇を検討する入口にはなり得ます。
ただし、能力不足を理由に普通解雇できるかどうかは、単に「仕事ができない」と感じるかどうかで決まるわけではありません。
採用時にどの能力を前提としていたのか、実際にどの業務でどの程度不足しているのか、会社がどこまで教育・指導・改善機会を与えたのかを確認する必要があります。
- 採用時に前提とした能力は何か
- 不足している能力は、どの業務に必要なものか
- 能力不足による業務上の支障が具体的にあるか
- 教育・指導・改善機会を与えたか
- 配置転換や別業務で対応できる可能性があるか
特に新卒や一般職の場合は、会社が教育・訓練によって育てることを前提にしていることがあります。
一方で、専門職や管理職として特定の地位・職務を前提に採用した場合は、求められる水準が高くなることもあります。
そのため、能力不足を理由に普通解雇を検討する場合は、採用時の前提、業務上の支障、改善可能性、会社の対応経過を順番に整理することが重要です。
能力を発揮しない場合は、勤務態度・勤怠・企業秩序の問題として整理する
成果が出ない原因が、能力そのものではなく、能力を発揮しようとしないことにある場合もあります。
たとえば、遅刻・欠勤を繰り返す、上司の指示に従わない、必要な報告をしない、周囲と連携しないといったケースです。
この場合、単なる能力不足ではなく、勤務態度不良、勤怠不良、服務規律違反、企業秩序への影響として整理する必要があります。
能力や経験があっても、就業日に出社しない、約束した時間に勤務しない、業務命令に従わない、周囲との連携を拒む場合には、会社として注意・指導や懲戒処分を検討する場面があります。
- 遅刻・欠勤・早退の頻度や理由を確認しているか
- 上司の指示や業務命令に従わない事実があるか
- 報告・連絡・相談の不足により業務支障が出ているか
- 周囲との連携に支障が出ているか
- 注意・指導・懲戒処分を段階的に行ったか
- 改善の機会を与えたにもかかわらず、同じ問題が繰り返されているか
ここで重要なのは、会社側が「やる気がない」「態度が悪い」と感じているだけでは足りないという点です。
具体的な行動、業務上の支障、注意指導の経過、改善状況を整理しておく必要があります。
能力を発揮できない場合は、健康上・私生活上の事情を確認する
成果が出ない原因が、本人の能力不足や勤務態度不良ではなく、健康上の問題や私生活上の事情にある場合もあります。
この場合、単純に「成果が出ないから普通解雇」と考えるのではなく、原因に応じた整理が必要です。
たとえば、うつ病などの精神疾患が疑われる場合、会社としては、まず本人の状態を確認し、必要に応じて心療内科等の受診や専門家への相談を促すことがあります。
診断書が提出された場合には、休職制度、勤務可能性、復職可能性を確認する必要があります。
また、私生活上の事情が業務に影響している場合もあります。
ただし、会社が従業員の私生活上の行為に干渉することは、原則として慎重であるべきです。
私生活上の事情があるというだけで、直ちに懲戒処分や普通解雇ができるわけではありません。
- 健康上の問題が疑われる状態か
- 診断書の提出や受診の必要性を確認すべき場面か
- 休職制度の対象となる可能性があるか
- 勤務時間・業務内容・配置の調整で対応できる可能性があるか
- 私生活上の事情が、業務に具体的な支障を及ぼしているか
- 会社として必要な限度で、本人から事情を聴く必要があるか
健康上の問題がある場合は、普通解雇よりも先に、休職・復職対応や受診の必要性が問題になります。
私生活上の問題がある場合も、会社が踏み込める範囲には限界があります。
重要なのは、本人の事情そのものではなく、それが業務遂行にどのような支障を与えているかを確認することです。
健康上の問題により業務を遂行できない場合は、私傷病・業務災害・通勤災害の区別、休職制度、診断書、復職可能性を整理する必要があります。
人事考課が低いだけでは、普通解雇の理由としては足りない
成果が出ない従業員については、人事考課が低くなっていることがあります。
しかし、人事考課が低いことと、普通解雇が有効になることは同じではありません。
人事考課は、従業員の勤務成績や職務遂行能力を確認するための資料にはなります。
しかし、普通解雇で問題になるのは、単に評価が低いかどうかではなく、
その低評価の内容が、就業規則上の普通解雇事由に該当するといえる程度のものかという点です。
そのため、評価結果だけで普通解雇を進めるのではなく、評価の根拠となる具体的事実、本人へのフィードバック、改善機会、業務上の支障を確認する必要があります。
- 低評価の根拠となる具体的事実があるか
- 評価基準が本人に示されていたか
- 評価結果を本人にフィードバックしていたか
- 改善目標・改善期間を設定し、その後の改善状況を確認していたか
- 低評価による業務上の支障を説明できるか
人事考課が低い場合でも、それだけで普通解雇できるわけではありません。低評価の根拠、改善機会、業務上の支障を整理する必要があります。
中小企業では、成果未達による業務上の支障を具体化する
中小企業では、1人の従業員が成果を出せないことによる影響が大きくなることがあります。
大企業のように代替要員や配置転換先が多くあるわけではなく、1人の不調やミスマッチが、現場全体の負担、納期、顧客対応、売上に直結することもあります。
そのため、中小企業では、成果が出ていないことによる業務上の支障を具体的に整理することが重要です。
ただし、中小企業だから解雇しやすいという意味ではありません。
会社規模や人員体制から見て、どのような支障があり、どのような対応が現実的に可能だったのかを確認する必要があります。
- 成果未達により、誰の業務負担が増えているか
- 納期・顧客対応・売上に具体的な影響が出ているか
- 任せる仕事の内容や量を見直すことで対応できる余地があるか
- 教育・指導に割ける人員や時間に限界があるか
- 会社として改善の機会を与えたうえで、なお継続が難しいと説明できるか
小規模企業では、1人の成果未達が現場に与える一発の影響が大きいことがあります。
だからこそ、抽象的に「成果が出ない」とまとめるのではなく、
どの業務に、どの程度の支障が出ているのかを具体化しておくことが重要です。
普通解雇を検討する前に確認したいポイント
成果が出ない従業員について普通解雇を検討する場合は、「成果が出ない」という結果だけで判断するのではなく、契約内容、成果未達の原因、会社の対応経過、業務上の支障を順番に確認する必要があります。
雇用契約書・労働条件通知書・求人票・採用時の説明に、具体的な職務・成果・役割が示されているか
その従業員に求めていた成果が、職務内容・地位・職責・賃金水準に見合うものとして説明できるか
成果が出ていないことによる業務上の支障を具体的に整理しているか
成果が出ない原因が、能力不足なのか、勤務態度・勤怠の問題なのか、健康上・私生活上の事情なのかを分けているか
能力不足の場合、教育・指導・改善機会をどこまで与えたかを整理しているか
勤務態度や勤怠の問題の場合、具体的な問題行動、注意指導、懲戒処分、改善状況を整理しているか
健康上の問題が疑われる場合、診断書、受診の必要性、休職制度、復職可能性を確認しているか
私生活上の事情がある場合、会社として必要な限度で、業務への具体的支障と会社が関与できる範囲を確認しているか
配置転換、任せる仕事の内容や量の見直し、目標の再設定など、解雇以外の対応可能性を確認しているか
本人への説明や話し合いの機会を設け、改善または合意退職を含む着地点を検討しているか
会社として、成果の約束、成果未達の原因、業務上の支障、改善機会、解雇以外の選択肢を整理したうえで、雇用継続が難しいと説明できる状態になっているか
これらを整理しておくことで、会社としてなぜ成果未達が問題なのか、どのような対応を行ったのか、なぜ雇用継続が難しいと考えたのかを説明しやすくなります。
まとめ:成果が出ない理由を分けて、次の対応を判断する
成果が出ない従業員がいる場合でも、それだけで直ちに普通解雇が有効になるとは限りません。
まずは、会社がどのような成果を求めていたのか、その成果が労働契約上どこまで前提とされていたのかを確認する必要があります。
1. 会社が一定の成果や貢献を求めることは、労働契約の内容です。
従業員が会社に労務を提供し、会社が賃金を支払う以上、会社が一定の成果や貢献を求めること自体は当然です。
2. ただし、成果が出ないだけで普通解雇できるわけではありません。
どの成果が、どの程度、どの時点までに求められていたのかを確認する必要があります。
3. 成果が出ない原因は、3つに分けて考えます。
能力がない場合、能力を発揮しない場合、能力を発揮できない場合では、会社が検討すべき対応が変わります。
4. 人事考課が低いだけでは、普通解雇の理由としては足りません。
低評価の根拠、改善機会、業務上の支障、本人へのフィードバックを整理する必要があります。
5. 中小企業では、成果未達による業務上の支障を具体化します。
1人の成果未達が現場に与える影響が大きい場合でも、感情ではなく、業務上の支障として説明できる状態にすることが重要です。
6. 最後は、改善・任せる仕事の見直し・合意退職を含む着地点も検討します。
普通解雇だけでなく、改善機会、任せる仕事の内容や量の見直し、他の業務や勤務地への配置転換、本人との話し合いによる合意退職など、解雇以外の選択肢も含めて整理します。
成果が出ない従業員への対応では、抽象的に「結果が出ていない」とまとめるのではなく、
成果の約束、成果未達の原因、業務上の支障、会社の対応経過、解雇以外の選択肢を順番に整理することが重要です。
成果が出ない従業員への対応を、原因と次の一手に分けて整理します
従業員に成果が出ていない場合、
会社としては「このまま雇用を続けられるのか」と悩む場面があります。
しかし、成果未達を理由に普通解雇を検討する場合は、成果の約束、成果未達の原因、業務上の支障、会社の対応経過、解雇以外の選択肢を順番に整理する必要があります。
田中社会保険労務士・行政書士事務所では、解雇ありきで進めるのではなく、
雇用契約書・労働条件通知書・求人票・採用時の説明、評価資料、注意指導の記録、業務上の支障、改善機会、任せる仕事の内容や量の見直し、配置転換、合意退職を含む着地点を整理し、
会社が次の一手を判断できるよう実務面からサポートしています。
成果が出ない原因をどの論点として扱うべきか、普通解雇に進める前に何を確認すべきか迷う場合は、早めに現在地を整理しておくことが重要です。
