~実践編~無断欠勤が続き、本人と連絡が取れない従業員への対応難易度★★★

従業員の無断欠勤が続き、電話、SMS、メールを送っても反応がない。このような場面では、会社としてどこまで連絡を試みるべきか、いつ書面対応に進むべきか、悩まれることが少なくありません。

特に、単なる欠勤ではなく、本人と一切連絡が取れない状態が続く場合には、安否確認の視点と、労務管理上の対応とを切り分けながら、段階的に進める必要があります。

本記事では、無断欠勤が続き、本人と連絡が取れない場合を想定し、初動のヒアリング、連絡ログの残し方、書面送付、自宅訪問、最終的な退職・解雇対応に至るまでの流れを、実務目線で整理します。

1.まず「何が起きているのか」を整理する

無断欠勤が発生した場面では、いきなり処分ありきで考えるのではなく、まず事実関係を整理する必要があります。

この種の事案では、①雇用条件・就業規則、②事実経過、③連絡状況の3つに分けて確認すると、整理しやすくなります。実務上は、雇用形態、就業規則の有無と内容、無断欠勤が一定期間続いた場合の取扱い(自然退職、解雇その他の定め)、欠勤開始日、最終出勤日、貸与物、連絡履歴などを、項目ごとに整理して確認できるようにしておくと、その後の判断がぶれにくくなります。

特に重要なのは、次の4点です。

  • 最終出勤日と無断欠勤開始日を正確に把握すること
  • 就業規則に、無断欠勤が続いた場合の取扱い(自然退職、解雇等)に関する定めがあるかを確認すること
  • これまでに、どのような連絡を試みたかを整理すること
  • 本人に入院その他やむを得ない事情がある可能性を慎重に確認すること

ここが曖昧なまま進むと、後になって「会社は十分に確認していない」「就業規則の内容を正確に踏まえずに対応した」といった問題が生じやすくなります。

2.この場面で会社が押さえるべき3つのこと

本人と連絡が取れない場合、会社として意識すべきことは1つではありません。

まず押さえたい3つの視点
安否確認の視点
就労意思確認の視点
後日の説明に備えた記録化の視点
単なる勤怠不良と決めつけず、事故、入院、メンタル不調などの可能性も踏まえながら、会社として確認を尽くしたかが重要になります。

無断欠勤が続いているからといって、最初から「もう辞めたものとして扱う」と短絡的に進めるのは危険です。他方で、何も記録を残さず曖昧に待ち続けるのも適切ではありません。

この種の事案では、感情ではなく、事実を積み上げながら進めることが重要です。

裁判例から見ても、最初から「無断欠勤」と決めつけるのは危険です

実際の裁判例でも、欠勤が続いていることだけを見て、直ちに処分へ進んだ会社側の対応が問題とされた例があります。

たとえば、日本ヒューレット・パッカード事件では、精神的不調が疑われる従業員について、会社が休職等の検討をしないまま、無断欠勤を理由に諭旨退職処分としました。しかし、最高裁は、そのような対応を適切とはいい難いとして、当該処分を無効と判断しました。

この事案が示しているのは、本人と連絡が取りづらく、欠勤が続いている場面ほど、単純に「無断欠勤だから処分」と決めつけるのではなく、事情確認、健康状態の確認、記録化を踏まえて進める必要があるということです。

3.連絡ログを残しながら、段階的に対応する

実務では、電話、SMS、メール、LINE等、会社が取り得る連絡手段を用いながら、必要に応じて書面、自宅訪問へと段階を踏んでいく形が基本になります。重要なのは、「何をしたか」だけでなく、「いつ、誰が、どの手段で、どのような結果だったか」を時系列で残しておくことです。

口頭では「何度も連絡した」と言えても、記録がなければ後で弱くなります。逆に、連絡ログが整っていると、会社としての対応の丁寧さが見えやすくなります。

無断欠勤・連絡不能時の基本フロー(代表例)
電話・SMS・LINE等による初動連絡
メール等による再連絡
書面による安否確認
重い通知書面の送付
必要に応じた自宅訪問
最終処理の通知

もっとも、実際の連絡手段や順番は、会社の運用、本人の連絡先の把握状況、緊急性などによって前後し得ます。大切なのは、複数の手段で確認を尽くし、その経過を記録として残しておくことです。

この流れは、単に段取りの問題ではありません。安否確認の段階、就労意思確認の段階、最終処理の段階を分けることで、会社の判断が急すぎるものではなかったことを示しやすくなります

4.最初の重い通知書面で何を伝えるか

電話、SMS、メール、安否確認書面までは、会社として比較的対応しやすい場面です。他方で、実務上悩みやすいのは、その先の書面で、会社として何を、どこまで明示するかという点です。

この段階の書面は、単なる催促ではありません。会社が把握している事実、就業規則上どのような取扱いを会社が通知するのか、本人にどのような対応を求めるのかを、相手に分かる形で示す、最初の重い通知書面です。

この書面で伝えるべき内容は、大きく4つあります。すなわち、①会社が把握している無断欠勤と連絡不能の事実、②就業規則上どのような取扱いを会社が通知するのか、③本人に事情がある場合はいつまでに会社へ連絡し、資料を提出してもらうのか、④そのうえで会社としてどのような処理を通知するのか、です。

ここで重要なのは、単に「連絡してください」と求めるだけで終わらせないことです。会社として何を事実として把握し、どの定めを前提に、どのような処理を通知するのかを、相手に分かる形で示しておく必要があります。

たとえば、最初の重い通知書面の記載例(PDF)では、無断欠勤が継続しており、電話、SMS、メール及び書面による連絡にも応答がないことを明記したうえで、就業規則上の当然退職の定めに基づく取扱いを示しつつ、万一その成立に見解の相違がある場合に備えて、予備的に普通解雇を通知する構成にしています。

もっとも、この段階で一方的に結論だけを書き切るのも相当ではありません。入院その他やむを得ない事情がある場合には、資料を添えて期限までに申し出てほしい旨を併せて記載し、事情確認の余地を残しておくことが重要です。

また、会社貸与物の有無や住所変更の有無など、今後の必要事項確認に関する連絡事項も、この段階であわせて示しておくと、その後の処理を進めやすくなります。

実務上は、この種の書面を内容証明郵便で送り、配達の事実を残す必要がある場合には配達証明を付けることがあります。また、同文の写しや就業規則の該当箇所などは、レターパックや書留などの追跡可能な方法で別送することもあります。これは、どのような文面を出し、どのような資料を送ったのかを、後で確認しやすくするためです。

なお、この種の事案では、就業規則に当然退職の定めがあっても、その適用場面や有効性に争いが生じる可能性があります。そのため、当然退職だけに依拠せず、予備的に普通解雇のルートも示しておく構成は、実務上意味があります。

最初の重い通知書面は、事実、ルール、今後の見通し、そして本人に求める対応を整理して伝え、最終処理につなげるための土台となる書面です。

5.自宅訪問をどう位置づけるか

書面を送ってもなお連絡がない場合には、自宅訪問を検討することがあります。ただし、この場面で重要なのは、自宅訪問を「圧力」や「回収の場」として位置づけるのではなく、あくまで事情確認と最終確認のための対応として考えることです。

本人と一切連絡が取れない状態が続いている以上、会社としては、事故、入院、メンタル不調その他やむを得ない事情の可能性も念頭に置く必要があります。そのため、自宅訪問も、「無断欠勤だから直ちに責める」という発想ではなく、連絡が取れない状況の中で、会社として確認を尽くすための一手段として位置づけるべきです。

実務上は、不在時に短いメモを投函し、会社から案内事項があるため連絡してほしい旨を伝えることがあります。具体的な文面は、自宅訪問時の投函メモの記載例(PDF)をご覧ください。勤務状況や今後の必要事項確認のため訪問したことを簡潔に示しつつ、その場で処分を断定しすぎず、「ご連絡ください」を中心とした穏やかな文面にとどめています。

また、自宅訪問を行った場合には、訪問日時、訪問者、応答の有無、投函物の有無、現地の状況などを、社内記録として残しておくことが重要です。後になって、会社がどのような確認を行ったのかを説明する際、この記録が役に立ちます。

訪問を行う場合は、2名、日中、短時間を基本とし、相手方に過度な心理的圧迫を与えるようなやり方にならないよう注意が必要です。自宅訪問は強い対応に見えやすいからこそ、目的、人数、時間帯、言い方のすべてに配慮が求められます。

自宅訪問は、それ自体で結論を出すためのものではありません。これまでの連絡経過や書面対応を踏まえたうえで、なお確認の必要がある場合に行う、補充的な確認手段と位置づけるのが適切です。

6.最終処理の通知でどう締めるか

最終処理の通知は、ここまでの連絡経過、書面送付、自宅訪問を踏まえて、会社としての結論を正式に伝えるための書面です。

この段階で重要なのは、結論だけを一方的に示すのではなく、そこに至るまでに会社がどのような確認を行ってきたのかを踏まえて通知することです。本人に連絡が取れず、事情を申し出る機会も設け、自宅訪問による確認まで行ったにもかかわらず、なお事情の申出も就労継続意思の確認もできなかったことを前提として、最終処理を位置づける必要があります。

具体的な文面は、最終処理の通知書面の記載例(PDF)をご覧ください。これまでの連絡経過と確認対応を踏まえたうえで、当然退職として取り扱うこと、又は先に通知していた予備的普通解雇が効力を生じたことを、改めて通知する構成です。

最終処理の通知は、その書面単体で強いのではなく、それまでの対応の積み重ねの上に成り立つものです。電話、SMS、メール、書面、自宅訪問といった経過が整理されていてこそ、会社としての最終判断も説明しやすくなります。

また、この段階でも、会社貸与物の返却、退職に伴う必要書類の確認、住所変更がある場合の申告など、実務上必要な事項は明記しておくべきです。最終処理の通知は、法的な意味だけでなく、その後の事務処理につなげる役割も持っています。

最終処理の通知は、感情的な締めくくりのための書面ではありません。会社として、何を確認し、どのような手順を踏み、どの時点でどの結論に至ったのかを整理して示すことで、一連の対応を締めるための書面と位置づけるのが適切です。

7.この種の事案で残しておきたい資料

無断欠勤が続き、本人と連絡が取れない事案では、「会社が何を確認し、何を行い、その結果どうだったのか」を資料として残しておくことが重要です。感覚的に対応するのではなく、後から見ても経過がたどれる形にしておく必要があります。

特に、次のような資料は残しておきたいところです。

  • 事実関係の整理メモ(雇用条件、欠勤開始日、最終出勤日、貸与物の有無など)
  • 連絡ログ
  • SMS・メールの送信記録
  • 書面の写しと発送記録
  • 配達証明・追跡結果
  • 自宅訪問時の社内記録
  • 就業規則の該当箇所

とくに重要なのは、最初の事実整理メモと連絡ログです。この2つがあると、どのような前提で、どの手段を、どの順番で行ったのかが見えやすくなります。そこに、送付した書面の写しや発送記録、自宅訪問時の記録が重なることで、一連の対応経過を説明しやすくなります。

「何度も連絡した」「きちんと確認した」というだけでは足りず、後から確認できる形で資料を残しておくことが重要です。資料として残ってはじめて、会社としての対応の丁寧さや慎重さが見えやすくなります。

この種の事案では、最終的な退職・解雇の場面だけでなく、その前段階の確認や連絡の積み重ねこそが重要になります。だからこそ、個々の対応をその場限りで終わらせず、時系列で追える形にして残しておくことが、会社としての対応を支える土台になります。

8.この事案が難しい理由

無断欠勤が続き、本人と連絡が取れない事案は、一見すると「連絡が来ない従業員への対応」に見えます。しかし、実際には、会社として決めなければならないことが多く、見た目以上に難しい事案です。

とくに悩みやすいのは、いつまで連絡を待つのかどの時点を無断欠勤の開始日とみるのか就業規則上どのような取扱いがあり得るのか自然退職として取り扱うのか、普通解雇も視野に入れるのかといった点です。

さらに、本人に入院その他やむを得ない事情がある可能性もあるため、いきなり結論に進むことはできません。他方で、何も決めないまま待ち続けるだけでは、在籍関係が曖昧なままとなり、社会保険料の取扱い貸与物の管理今後の人員配置を含む実務対応にも支障が生じやすくなります。そのため、事情がある場合には、いつまでに会社へ連絡し、必要な資料を出してもらうのかも含めて、日付と手順を整理しながら進める必要があります。

また、この種の事案では、就業規則の確認、連絡履歴の整理、書面の作成、送付方法の選択、自宅訪問の要否など、法的な判断と実務的な対応を並行して考えなければならないという難しさがあります。書面の中身だけでなく、どの順番で、どの日付で、どの方法を取るかまで含めて整える必要があります。

とくに注意が必要なのは、日付の整合性です。最終出勤日、無断欠勤開始日、自然退職として取り扱う日、本人に事情がある場合の連絡期限、普通解雇の効力発生日などが相互に関係するため、1つでもずれると全体の説明が不安定になりやすくなります。

さらに、この事案では、対応を誤った場合のリスクも小さくありません。自然退職としての取扱いが無効、又は予備的に通知した普通解雇が無効と評価された場合には、在籍関係が継続していたものとして扱われ、会社側に大きな負担が生じるおそれがあります。

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このように、この事案の難しさは、単に連絡が取れないこと自体にあるのではなく、事実確認、事情確認、法的処理、実務処理、日付管理を同時に組み立てなければならないことにあります。だからこそ、感覚で進めるのではなく、確認事項、連絡経過、書面、日付を段階的に整理していくことが重要になります。

9.まとめ

無断欠勤が続き、本人と連絡が取れない事案では、会社として重要なのは、いきなり結論に飛ぶことではなく、事実確認、安否確認、意思確認、記録化を段階的に進めることです。

この種の事案では、無断欠勤の開始日、就業規則上の取扱い、自然退職と普通解雇の整理、本人に事情がある場合の連絡期限など、決めなければならない事項が多くあります。しかも、それぞれは日付や手順の整合性とも関わるため、感覚的に進めると後で崩れやすくなります。

だからこそ、最初に事実関係を整理し、連絡ログを残しながら段階的に対応し、必要に応じて重い通知書面、自宅訪問、最終処理の通知へと進めていくことが重要です。

無断欠勤・連絡不能事案は、単なる勤怠対応ではなく、法的処理と実務対応を同時に組み立てる必要がある場面です。迷ったまま進めるのではなく、確認事項、書面、日付、発送記録を整理しながら進めることが、会社としての対応を支えることになります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。実際の対応は、就業規則の内容や事実関係によって異なりますので、具体的なご相談は弊事務所までご連絡ください。

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