人事考課が低いことを理由に普通解雇できる?会社が確認すべきポイント

人事考課が低いことを理由に普通解雇できる?会社が確認すべきポイント

普通解雇

人事考課が低いことを理由に普通解雇できる?会社が確認すべきポイント

人事考課で低い評価をつけている従業員について、「D評価だから解雇できる」と考えて普通解雇を進めると、解雇の有効性が争われ、解雇後の賃金相当額の支払い、復職対応、和解金などが問題になることがあります。
重要なのは、人事考課の結果そのものではなく、評価の根拠、評価過程、本人へのフィードバック、改善機会、就業規則上の解雇事由との関係を整理することです。

人事考課が低い従業員について、次のように感じる場面があります。

「ずっとD評価だから、もう解雇してよいのではないか」

「人事考課で低評価をつけているから、能力不足は証明できるはずだ」

「評価結果を見れば、勤務成績が悪いことは明らかではないか」

人事考課は、従業員の勤務成績や職務遂行能力を確認するための重要な資料です。
しかし、人事考課が低いことと、普通解雇が有効になることは同じではありません。

特に、人事考課が甘く運用されている会社では、本来ならもっと低い評価を検討すべき従業員に対して、D評価やC評価にとどめていることがあります。
その場合、後から「勤務成績が著しく不良だった」と説明しようとしても、評価結果との間にずれが生じることがあります。

そのため、人事考課を普通解雇の材料にする場合は、評価結果だけでなく、なぜその評価になったのか、本人にどのように伝えたのか、改善の機会をどこまで与えたのかを整理する必要があります。

この記事で伝えたいこと

人事考課が低いことは、普通解雇を検討する材料にはなります。
しかし、低評価そのものだけでは足りません。
評価の根拠、評価過程、本人へのフィードバック、改善機会、就業規則上の解雇事由との関係を整理することが重要です。

人事考課が低いだけで、普通解雇できるわけではない

会社では、従業員の勤務成績や職務遂行能力を確認するために、人事考課を行っていることがあります。
たとえば、A評価からE評価までの5段階で評価している会社もあります。

しかし、普通解雇で問題になるのは、単に人事考課が低いかどうかではありません。
重要なのは、その低評価が、就業規則上の普通解雇事由に該当するといえる程度のものかという点です。

たとえば、就業規則に「著しく勤務成績が不良で、改善の見込みがないとき」といった解雇事由がある場合、人事考課の低評価がその事由に当たるかを慎重に確認する必要があります。

また、同じE評価であっても、その理由が、能力不足なのか、勤怠不良なのか、勤務態度不良なのか、協調性不足なのかによって、会社が確認すべき内容は変わります。

人事考課は、低評価という結果を示すものです。
しかし、普通解雇を検討する場面では、その低評価の中身を分解し、どの普通解雇の問題として整理すべきかを確認する必要があります。

人事考課が低いことは、普通解雇を検討する入口にはなります。けれど、それ自体が解雇理由になるのではなく、低評価の中身を確認することが出発点になります。

D評価とE評価では、意味が違うことがある

人事考課では、低評価といっても、その意味は会社ごとに異なります。
そのため、「D評価」「E評価」という名称だけで普通解雇の可否を判断することはできません。

  • 【E評価】明らかに勤務成績が不良で、改善の見込みが乏しい
  • 【D評価】最低限の水準には達しているが、改善が必要である
  • 【C評価】標準的な水準である

このような制度であれば、E評価は「著しく勤務成績が不良」と評価しやすいことがあります。
一方で、D評価は「改善が必要」という意味にとどまり、直ちに普通解雇事由に該当するとは限りません。

そのため、評価の名称だけで判断せず、その評価が会社の制度上どのような意味を持つのかを確認する必要があります。
「D評価だから解雇できる」というよりも、「D評価の内容が、就業規則上の解雇事由に当たるほど重大か」を見ることになります。

甘い人事考課が、会社の説明を難しくすることがある

実務上、特に注意が必要なのは、人事考課が実態よりも甘く運用されている場合です。

本来であれば、より低い評価を検討すべき従業員に対しても、職場の雰囲気や本人への配慮から、D評価やC評価にとどめている会社があります。
しかし、後から普通解雇を検討する場面では、この甘い評価が会社の説明を難しくすることがあります。

たとえば、会社としては「この従業員は勤務成績が著しく不良だった」と説明したいのに、人事考課上はD評価にとどまっている場合、外から見ると「最低限の水準には達していたのではないか」と見られる可能性があります。

人事考課は、従業員を守る資料にも、会社の説明を支える資料にもなります。だからこそ、甘くつけすぎると、後で会社自身の説明を苦しくすることがあります。

もっとも、会社全体として人事考課が比較的緩やかに運用されている中で、それでも低い評価が続いていたのであれば、そのこと自体が一定の説明材料になることがあります。

ただし、他の従業員の人事考課結果まで広く持ち出して説明しようとすると、個人情報や社内情報の取扱いに注意が必要になります。
そのため、単に「他の従業員と比べて低い」という説明に頼るのではなく、その従業員について、なぜその評価になったのか、実際にはどのような問題があったのかを整理しておくことが重要です。

人事考課の結果だけでなく、評価過程を記録する

多くの会社では、人事考課の結果は記録されています。
しかし、なぜその評価になったのかという過程までは、十分に記録されていないことがあります。

普通解雇を検討する場面では、人事考課の結果だけでなく、評価に至った判断過程を説明できるかが重要になります。

確認1

評価対象となった業務や役割を整理しているか

確認2

その業務について、どのような水準を求めていたのかを確認しているか

確認3

評価が低くなった具体的な理由を説明できるか

確認4

単に「能力不足」「勤務態度不良」とするのではなく、どの行動、成果、ミス、遅れ、連携不全が評価に影響したのかを整理しているか

確認5

誰が、どの資料や事実をもとに、どのような基準で評価したのかを確認しているか

確認6

本人に評価結果と改善点をどのように伝えたかを記録しているか

人事考課は、従業員の業務遂行に対して、会社が一定の判断を行った結果です。
そのため、評価結果そのものだけでなく、評価対象、評価理由、評価基準、本人への説明を残しておくことで、会社として評価の理由を説明しやすくなります。

フィードバック面談と改善機会が重要になる

人事考課の結果を理由に普通解雇を検討する場合には、フィードバック面談も重要です。

評価が低いことを本人に伝えるだけではなく、なぜその評価になったのか、今後どのように改善すればよいのかを説明し、改善の機会を与える必要があります。

  • 人事考課の結果を本人に説明したか
  • 評価が低くなった具体的な理由を伝えたか
  • 改善すべき行動や業務水準を示したか
  • 改善期間や再確認の時期を設定したか
  • 本人からの意見や反論を聞いたか
  • 改善状況を再度確認したか

低評価をつけたとしても、本人から見ると「何を直せばよいのか分からなかった」「十分な説明を受けていない」「改善の機会を与えられていない」と感じることがあります。

そのため、人事考課を普通解雇の材料にする場合には、評価、説明、改善機会、再評価の流れを残しておくことが重要です。

人事考課のフィードバックは、単なる評価通知ではありません。会社が何を問題とし、今後どの改善を求めるのかを本人に伝えるための機会です。

普通解雇を検討する前に確認したいポイント

人事考課が低い従業員について普通解雇を検討する場合は、評価結果だけで判断するのではなく、就業規則上の根拠、評価の意味、評価過程、本人への説明、改善機会を順番に確認する必要があります。

確認1

就業規則に、根拠となる普通解雇事由が定められているか

確認2

低評価の内容が、「勤務成績不良」「職務遂行能力不足」「改善の見込みがない」などの定めに結びつくか

確認3

D評価、E評価などの評価区分が、会社の制度上どのような意味を持つのかを整理しているか

確認4

評価が低い理由について、具体的な業務上の支障、成果不足、ミス、注意指導の経過などを確認しているか

確認5

誰が、何を、どの基準で評価したのかを説明できる状態になっているか

確認6

評価結果、理由、改善点を本人に説明し、本人の言い分も確認したか

確認7

注意指導、面談、改善期間、再評価などを通じて、改善の機会を与えたか

確認8

配置転換、担当業務の変更、指導方法の見直しなど、会社規模や業務実態に応じて検討できる対応がなかったか

最終確認

評価結果だけでなく、評価の根拠と改善機会を踏まえて、それでも雇用継続が難しいと説明できるか

これらを整理しておくことで、会社として何を問題と考え、どのような改善を求め、
それでも雇用継続が難しいと判断したのかを説明しやすくなります。

まとめ:人事考課は、普通解雇の「入口」にはなるが「答え」ではない

人事考課が低いことは、普通解雇を検討する重要な材料になることがあります。
しかし、低評価そのものだけで、直ちに普通解雇が有効になるわけではありません。

1. 人事考課が低いだけで、普通解雇できるわけではありません。
低評価は普通解雇を検討する材料にはなりますが、就業規則上の解雇事由に該当するほどの事情があるかを確認する必要があります。

2. D評価とE評価では、意味が違うことがあります。
評価の名称だけでなく、その評価区分が会社の制度上どのような意味を持つのかを整理します。

3. 甘い人事考課は、後で会社の説明を難しくすることがあります。
実態よりも甘い評価をつけていると、後から「勤務成績が著しく不良だった」と説明しにくくなることがあります。

4. 人事考課の結果だけでなく、評価過程を記録します。
誰が、何を、どの基準で評価したのか、本人にどのように説明したのかを整理しておくことが重要です。

5. フィードバックと改善機会が重要です。
低評価を伝えるだけでなく、改善すべき内容、改善期間、再確認の機会を設けることが必要になります。

人事考課を理由に普通解雇を検討する場合は、評価結果だけで判断せず、
評価の根拠、評価過程、本人へのフィードバック、改善機会、就業規則上の解雇事由との関係を整理することが重要です。

人事考課を理由に普通解雇を検討する前に、評価の根拠と対応経過を整理します

人事考課が低い従業員への対応では、評価結果だけで判断するのではなく、
就業規則上の解雇事由、評価の意味、評価に至った過程、本人への説明、改善機会を整理する必要があります。

「D評価だから解雇できる」と進めてしまうと、後から、なぜその評価になったのか、どのような改善を求めたのか、
それでも雇用継続が難しいと判断した理由を説明できるかが問題になることがあります。

田中社会保険労務士・行政書士事務所では、解雇ありきではなく、
人事考課の内容、評価の根拠、本人へのフィードバック、改善機会、解雇以外の選択肢を整理し、
経営者が次の一手を判断できるよう実務面からサポートしています。

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