実際にあった相談事例①「失業給付で貰える額が約100万も違う!?」
こんにちは、さいたま市にある田中社会保険労務士・行政書士事務所の田中です。
今回は、実際にあった事例として個人の方からのご相談で「退職後に失業給付(※基本手当のこと、以下同じ。)は大体どれくらい貰えるのか」についてご紹介させて頂きます。
※ご依頼様のプライバシー保護のため一部フィクションを含んでいます。
【ご相談者】個人
【ご相談内容】退職後にどれくらい失業給付を貰えるのかざっくり教えて欲しい
【雇用形態】正社員
まず、世間でよく言われている失業給付を貰うためには雇用保険に加入している必要があります。ご相談者様は、正社員のため以下①~②の要件を満たしているため雇用保険に加入する義務があります。
<雇用保険の加入要件の原則>
①期間の定めがなく雇用されること
②1週間の所定労働時間が 20 時間以上であること
こういった事例でよく問題になるのが、加入要件を満たしていても「会社が雇用保険加入の手続きをしていないこと」があります。その場合、まずは会社にご相談して「遡及(過去にさかのぼって)加入」をして頂くこととなります。遡及加入の場合、原則さかのぼれる期間に制限は2年となっていますが、給与明細や源泉徴収票から雇用保険料が給与から天引きされていたことが証明できる場合、2年を超えて加入することが可能です。
ご相談者様には上記の旨をお伝えし、「正社員として週40時間は働いていること」と「雇用保険被保険者証※があること」の確認がとれたので失業給付が貰える前提を満たしていることが分かりました。
※会社が雇用保険に加入させた証明のようなものです。
失業給付を貰うためには原則、雇用保険に加入している期間が離職前2年間に通算して12か月以上必要となります。ただし、以下①~②の場合は離職前1年間に雇用保険に加入している期間が通算して6か月以上でOKとなります。
<雇用保険加入期間の特例>
①倒産・解雇等の理由により離職した場合
②期間の定めのある労働契約が更新されなかったことその他やむを得ない理由により離職した場合
上記のように「退職した理由」によっては①~②の例外に該当することとなり、「短期間での離職でも失業給付を貰えることが可能」となります。また、これは「失業給付を貰える日数」に関わるところなので慎重にヒアリングを行いました。
ご相談様に退職したい理由をお伺いしたところ「人手不足で長時間労働」が恒常的になっており、体力面でも精神面でもとっても辛いとのことでした。そのため、退職せざるを得ないが今後の生活も不安なので転職活動を落ちついて行うためにも失業給付が必要とのことでした。
ご依頼様からは長時間労働の具体的な状況を把握するために1年間の働いた日数や時間が分かる資料をご提供頂き、ハローワークに確認をとったところ上記の①に該当することが判明しました。具体的な要件としては、以下に該当しておりました。
【離職の直前6か月間のうちに[1]いずれか連続する3か月で45時間、[2]いずれか1か月で100時間、又は[3]いずれか連続する2か月以上の期間の時間外労働を平均して1か月で80時間を超える時間外労働が行われたため離職した者】
※①倒産・解雇等の理由により離職した場合の「等」に含まれる細かい要件です・・・。
①に該当することとなったため、雇用保険の加入期間が離職前に12か月なく6か月でOKとなりました。ただ、今回の事例においてはご本人様は8年間会社にお勤めとのことだったので①に該当するかどうかは重要でないとも思えそうです。
実は、①~②に該当するかどうかで【貰える失業給の日数】が全く異なります!!
以下は、①~②に該当する場合の日数です。
仮にご相談者様の年齢を【45歳以上60歳未満】とした場合、【雇用保険に加入していた期間は8年】となりますので【240日】貰えることとなります。しかし、何も知らずに「ただ自己都合」で辞めますと会社に伝えた場合には、以下の日数になってしまうおそれがあります。
ご覧の通り、【雇用保険に加入していた期間は8年】となりますので【90日】貰えることとなります。約3倍、日数が異なることとなります。また、自己都合で退職された場合は、すぐに失業給付を貰えるわけでもなく「7日間の待期期間」に加えて「自己都合退職に特有の原則2~3か月の待期期間」が必要となります。
これで失業給付が以下①~⑤が分かりました。
①雇用保険に加入する義務があること
②雇用保険への手続き事務にも問題がないこと
※入社日と雇用保険加入日のズレなど他の問題がないことも合わせて確認済み
③倒産・解雇等の理由により離職した場合に該当することが濃厚なこと
④③の場合、自己都合退職に特有の2~3月の待期期間がないこと
⑤③の場合、失業給付の貰える日数は240日なこと
最後に「1日あたりの失業給付の額」を計算できればザックリの額が分かります。
計算方法は、以下のとおりです。
①日額その1=離職前6か月の給与総額(※1)÷180
②日額その2=①日額その1×45~80%(※2)
(※1)会社から支払われた全額が給与と言うわけではなく何が給与に該当するかは細かい基準がありますが、ざっくりの計算なら全額でOKかと思われます。
(※2)245~80%のどれに該当するかは「①日額その1」と「離職時の年齢」によって異なります。
今回の事例においてはざっくりの計算で問題がないとのことでしたので以下のサイトを利用させて頂きました。
https://keisan.casio.jp/exec/system/1426729546
※ご使用の場合は、あくまでご参考程度に活用されることをオススメします。
試算の結果は、以下のとおりでした。
【ご相談頂いた結果の場合】
6,666円(1日あたりの額)×240日(貰える日数)=1,599,840
【ご相談頂かなかった結果の場合】
6,666円(1日あたりの額)×90日(貰える日数)=599,940
【差額】
999,900円
約100万の違いがでました。生活費が仮に1か月20万円だとすると約5か月の違いがでることとなります。試算の結果をご依頼様にお伝えしたところ、「安心して次の決断をすることができそうです」との一言を頂けました。ご依頼様の今後の活躍を心より願っております。
田中社会保険労務士・行政書士事務所では、丁寧なヒアリングを行いお客様にとって最適のご提案をさせて頂きます。社会保険にお困りの際には是非ご相談下さい。
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