実際にあった相談事例②「社長は労災保険が使えない?」

こんにちは、さいたま市にある田中社会保険労務士・行政書士事務所の田中です。
本日は、実際にあった事例として「法人成りをする際の社会保険適用の事例」についてご紹介させて頂きます。
※ご依頼様のプライバシー保護のため一部フィクションを含んでいます。
【ご相談者】個人事業主
【業 種】建設業
【ご相談内容】法人設立に伴う社会保険手続きなど全部任せたい
【現在の雇用形態など】個人事業主
個人事業主から法人になることを「法人成り」と言います。今回は、提携の税理士の先生のご紹介で法人成りをする際の社会保険手続きの適用を一式行わせて頂きましたが、「建設業」特有の注意点がありました。それは、代表取締役(以下、社長。)ご自身が従業員と同じように現場の仕事をする点です。
もちろん、会社設立時から数年は建設業以外の業種でも社長ご自身が従業員様と同じような仕事をすることはあると思われます。しかし、それが「命を落とす危険のある仕事」だということがポイントになります。
法人なりをする建設業や運送業の社長様に覚えて頂きたいのが社長が仕事でケガをしたり仕事で病気になってしまった場合、労災保険は原則使えないということです。もし、仕事でケガや病気になってしまった場合は、病院にかかった際の治療費は全額負担となります。なぜならば、健康保険証が使えないからです。まだ、残念にもなくなってしまった場合には、遺族への労災保険からの年金は支給されないこととなります。
ただ、治療費だけであれば全額ではなく3割負担で対処できる場合があります。それは、会社で社会保険に加入している加入者数が5人未満であれば例外1として健康保険証が使えるからです。しかし、今回ご相談頂いた方の例だと法人成りに伴い社会保険に加入する従業員が5人以上となってしまうため例外が使えない状況でした・・・。

そこで、社長が労災保険に特別に加入する「特別加入」という制度をご提案させて頂きました。
特別加入するということは保険に加入するということなので数万の費用は毎年かかってしまいますが、何かあったときに金銭的にも心理的にも安心して治療に専念することが可能となります。
なお、特別加入をするためには労働保険事務組合2に加入しなければなりません。労働保険事務組合への加入は、ちまたにある労働保険事務組合に社長ご自身で問い合わせて加入することも可能ですが、加入時はもちろんのこと、毎年必要な煩雑な事務手続きを社長でして頂く必要があります。また、実際に事故が起きたときの労災保険を使う申請は、行政が指定するフォーマットに沿って作成しなければなりません。
そこで、社労士を介して労働保険事務組合に加入されてはいかがでしょうか。加入時の煩雑な手続き~実際に事故が起きてしまった際の行政への様々な手続きを全てお任せいただけます!
なお、弊所は、「埼玉SR経営労務センター」に加入しておりますのでご安心ください。
今回のお客様は、今後も長いお付き合いをされたいとのことでしたのでその他、給与計算や社会保険手続きや従業員の労働問題にも対応できる「労務顧問契約」を法人成りの後に締結させて頂きました。法人成り後も日々問題は起こりますが、拡大されていく会社を見るのが楽しみです。
- 通達:法人の代表者等に対する健康保険の適用について(平成15年7月1日 保発第0701002号) ↩︎
- 厚生労働省HP:労働保険事務組合とは ↩︎
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