合意退職を成功させるための3つのポイント難易度★☆☆

合意退職を成功させる為の3つのポイント

前回は、安易な解雇がもたらす3つのリスクについての解説をしました。それでは、できる限り双方納得して問題社員と合意退職をするためにはどのようにしたらよいのでしょうか。

合意退職を成功させるためのポイント①

◆一番目のポイントは 『自己認識の歪みを気付かせる取り組み』が必要です。

自身の過去の経験からもこれまで弊所が対応した問題社員の特徴として「自身の価値観や行動基準等が間違っていると気付いていないこと」が多いです。また、間違っている行動だと分かっていたとしても「自分だけは特別に許される」と言う根拠のない自信を持っているケースもあります。

このような社員に指導をすると最もらしい反論をするのですが、組織全体の利益として適切な行動かと言うと、そうではない場合(視野が自身だけにフォーカスしている場合)が多いです。

この「自己認識の歪みを気付かせる取り組み」は、非常に「根気」がいります。長い年月経て形成された思考・行動パターンを修正することになるからです。

しかし、この取り組みは、会社がきちんと面倒を見る取り組みを行った証拠となりますし、退職勧奨を行って交渉する場合においても、問題社員の一定の理解を得られることがありますので避けては通れないものです。

合意退職を成功させるためのポイント②

◆二番目のポイントは、合意退職に備えて『特別(割増)退職金』を支払うことです。

「筋目を補う金目」という言葉があり、問題社員に退職を合意してもらうためには①でお伝えした通り、自身に問題があることを気付いてもらう必要があります。これが筋目ということになります。

筋目が無い場合、退職してもらうためには給与6ヶ月~1年以上など多額の金銭を積まなければ首を縦に振ってくれないでしょう。

しかし、1番目のポイントで挙げた自己認識の歪みを気付かせる取り組みの過程で「自身がこの会社に向いていないこと」に気づき他社であれば活躍できることにも気づければ、転職期間にかかる費用として3ヶ月~6ヶ月程度の給与額を特別(割増)退職金として支払うことで転職に踏み切ることが容易になると思われます。

なお、筋目と金目があっても合意退職に至らない場合は、別の解決方法を忍耐強く模索する必要があります。

合意退職を成功させるためのポイント③

◆三番目のポイントは、いわゆる失業手当を優遇された条件で受給できるように
『会社都合退職』 として扱うことです。

退職勧奨を行って従業員が離職された場合は、原則 「特定受給資格者」 の取扱いとなり、いわゆる 失業手当を受給できるまでの「期間」や「日数」に大きな差 があります。

特定受給資格者の取扱いになったとしても会社に金銭的な負担が生じるわけではないので、このような条件を提示できれば、会社にとっては大きな武器になります。

しかし、助成金(キャリアアップ助成金・トライアル雇用助成金など)の申請を検討されている場合、受給要件そのものや支給額に影響がでる可能性があるので事前にどの程度の影響になるのか調べておく必要があります。

記事のまとめ

この記事では、問題社員との合意退職を成功させるための3つのポイントをご紹介しました。これらはどれも一筋縄ではいかないものですが、会社として誠実に取り組むことで、双方が納得できる形で解決へと導くことができます。

1. 自己認識の歪みを気付かせる取り組み

相手への根気強い指導が求められる一方で、問題社員からの一定の理解を得るためにも避けては通れない重要なステップです。

2. 特別(割増)退職金の提示

金銭的なサポートによって円満退職を実現する実務的な解決策として有効です。

3. 会社都合退職の取扱い

いわゆる失業手当の優遇という形で相手にメリットを示しながら、会社側の助成金への影響を慎重に見極める必要があります。

これら3つのポイントを押さえることで、感情的な対立を避けつつ、問題社員との退職交渉を前向きに進めることが可能です。合意退職は難しい課題ですが、正しい知識と準備で対応すれば、双方にとって最善の結果を得られると私は信じています。

次回の記事では、合意退職のため、実際に退職勧奨を行う上で具体的なポイントについて詳しく解説いたします。

⚠「本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、具体的なご相談は弊事務所までご連絡ください。」

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